吉本ばなな「キッチン」
もう2週間前くらいになるのかな?くたくたの仕事帰りに本屋さんでたまたま目が合って懐かしくってかって読んだのね。初めて読んだのは計算で行くと中学校の頃か。ええええ。まだ何も知らない頃だったんだなぁ。あの頃にいちばん印象に残ったのは冷蔵庫の音と水分をしっかり保った夜の空気のイメージだったなぁ。最初の3ページ分くらいだよね。いや、10ページくらいか。文庫本だと25ページか。
窓辺で、かすかな明かりに浮かぶ植物たちが十階からの豪華な夜景にふちどられてそっと息づいていた。夜景――もう、雨は上がって湿気を含んだ透明な大気にきらきら輝いて、それはみごとに映っていた。
あとはカツ丼食いてー、みたいな話。それがいまや、32歳である。
私は二度とという言葉の持つ語感のおセンチさやこれからのことを限定する感じがあんまり好きじゃない。でも、そのとき思いついた「二度と」のものすごい重さや暗さは忘れがたい迫力があった。
とか
気づくと、うしろで雄一がぞうきんを手に床をふいていてくれた。そのことに、私はとても救われていた。
とか。この既視感は何だろう。実際にそんなことがあったよ。うん、実家のキッチンの床を洗剤でごしごしこすってぞうきんがけしてたよ。何に急かされてたんだろう。ものすごく一生懸命だった。
ドアを開ける度、ぞっとした。住まなくなってからのここは、まるで別人の顔をするようになった。
うん。ほんとうに。
いつか別々の所でここをなつかしく思うのだろうか。
それともいつかまた同じ台所に立つこともあるのだろうか。
私はいくつもそれをもつだろう。
読んでる間に、まだいろいろ終わってなかったんだなぁ、と気づかされた。まあ10年やそこらでは片付かないものなのかもしれない。でも同時に片付かなかったり終わってなかったりしていても別に前に進んでもいいんだよね、という話でもあって、それは当たり前なんだけど、まあ言われるまでもなく前に進んでるつもりなので、うむうむ、という感じ。
もっともっと大きくなり、いろんなことがあって、何度も底まで沈み込む。何度も苦しみ何度でもカムバックする。負けはしない。力は抜かない。
勇ましく響くけど、でも普通のことなんよね。つうことでがんばるっすよ。おやすみなさい。